祖父の調味料

 

母方の祖父は実に見事な禿げ頭だった。

幼稚園にあがる前、食卓で晩酌を始める祖父に一升瓶を運んでいくのが私の役目だった。小さな子供に一升瓶は荷が重く、一生懸命運んでいくと祖父が自慢の頭を平手でパシッと叩かせてくれる、それがご褒美というわけで、そんなことが嬉しくて私は毎日毎日喜んで、運んではパシッ、運んではパシッ。

そんな祖父には好物があった。

取り分けられた自分の味噌汁椀に、瓶にはいった漆黒のどろりとした得体の知れないものを少量溶かして飲む。他の家族は手をつけない、祖父だけの調味料。

それが「せんじ」だった。

 

 

せんじは、鰹節を作るときに生まれる副産物で、鰹の煮汁をとことん煮つめて、まさに煎じ詰めて出来上がる、極めて濃厚に鰹のエキスが凝縮された調味料だ。鰹節の産地である鹿児島の枕崎で作られている。なかなか売っているところを見かけないが、少し前に枕崎に行ったときに発見して買ってきた。

そのまま舐めると、濃厚すぎて苦くさえある。祖父のように味噌汁に入れるか、湯豆腐のつけだれに忍び込ませると、瞬時にして幸せになれる。

 

出自からして優秀な調味料に違いないのだが、残念ながら全国区のものでもない。

地元鹿児島でもみんなが日常使いしているものでもなさそうだ。

しかし50年以上前に祖父が好きだったレアな調味料が、今でもこうして手に入ることが嬉しい。

 

味噌汁、湯豆腐以外の活躍場所を今年は見つけてあげたい。

もしかしてラーメンに?チャーハンに?

あ、だめだ。炭水化物、控えてるんだった、私。

 

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祖父の調味料” に対して1件のコメントがあります。

  1. より:

    これ、欲しい。

    1. akiko より:

      梅さん、コメントありがとうございます!
      鹿児島内でも、あまり見かけないような品なので、見かけたら買っておきますね!

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