【居酒屋あきこ】思い出の和風ローストビーフ

皿:天啓花蝶24cm角皿(福珠窯)

 

かつて門前仲町に、「弥吉」という小料理屋があった。
カウンターだけ8席くらいだろうか。いつも常連で賑わっていた。

ここは父が懇意にしていた店らしく、子どもなのによく連れてきてもらった。
家族だけでなく、父の仕事仲間と並んだり、母が友人を連れてきたこともある。
一人で切り盛りする眼鏡のおじさんは、私たち姉妹にとても優しかった。「コーヒーゼリー食べます?」とメニューにはないデザートを、時々食後に出してくれた。

両親はともに、酒は一滴も飲まない。とにかく食べることが好きだった。
料理好きの母は勉強のため、と外食を楽しみにし、母の手料理が好物の父は、喜んで家族を外食に連れ出してくれた。
しかしいわゆる飲み屋、という風情の店に出かけることはほとんどなかったため、この店の記憶はとりわけ深く記憶に刻まれている。

この店で最も好んで食べたのが、「和風ローストビーフ」だ。
ローストビーフ、という名前が醸し出す特別感。
あっさりとした醤油だれ。さらし玉ねぎ。大葉。その場で練りあげられた和がらし。
どれが欠けても、何かが足されてもいけない。完璧な肉料理だった。
私はこの店で、成人のお祝いをしてもらっている。多分、それが最後の来店だったと思う。
あれから20年経ち、多少の記憶の美化はあるかもしれないが、あとにもさきにも、私が一番好きな肉料理は、ここの和風ローストビーフである。

今はもう、「弥吉」はない。
酒が飲めるようになったのに、ここでチビリチビリと盃を傾けることは出来ない。
きっと妹も、同じように苦々しく思っていることだろう。

弥吉の、和風ローストビーフを再現してみた。

写真はないし、今となっては確かめるすべもないが、ありがたいことに両親も妹も、「あの味だ」と言ってくれている。
昨年嫁に行った妹が、正月に作りたいからレシピを教えて欲しいと言ってきた。
嬉しい。
でもこれは、決して我が家の味ではない。
我が家が好きな味、である。

 

レシピ

<材料>

牛モモかたまり肉 1ブロック
玉ねぎ 1〜2個
にんにく 1〜2片
塩こしょう 適量

■タレ
しょうゆ 60cc
酒    20cc
みりん 20cc

 

<作り方>

(1)かたまり肉に塩胡椒を振り、常温でなじませておく。

(2)たまねぎの半量はスライス、にんにくも薄切りにして、ジップロックに入れる。
   たまねぎの半量は水にさらす。

(3)醤油、酒、みりんを一煮立ちさせて、(2)のジップロックに注ぎいれる。
   (ここでたまねぎとにんにくに熱が入る)

(4)フライパンに油をひかず、(1)のかたまり肉に焼き目をつける。強火すぎると表面だけ焦げるので注意。
   横から見て各面3〜5mmくらいの焼き目がつくように、全面を焼き付ける。両端も忘れずに。
   トングでつかむとやりやすい。

(5)(4)の肉を(3)のジップロックに入れ、空気を抜いて漬け込む。
   粗熱が取れたら食べられる。

(6)薄切りにし、ジップロックの薄切りたまねぎとともに盛り付ける。タレもかける。
   さらしたたまねぎ、大葉も添える。和辛子が合う。

 

<MEMO>
冷蔵庫に入れるとどうしても硬くなるので、その日のうちに食べきるか、残ったら翌朝、フランスパンにレタス引いて、マヨネーズかけてローストビーフサンドにするのがおすすめ。
これだと冷たくても気にならない。

お肉の種類は、やっぱり和牛がおいしい。
サシが入ってるような脂の強いものはあまり合わない気がする。赤身のモモで十分。
ガッツリたっぷり食べたいときは、オージービーフでもよい。好みもあるけど。

ジップロックで漬け込む用のたまねぎは、スライサーの薄切りと、カレーに入るくらいの厚み、二種類入れてます。薄いと染み込み過ぎてしょっぱくなる気がして。

タレも、3:1:1であれば60ccでなくてもいいので、買ったかたまり肉のサイズに合わせて、増やしたり減らしたりするとよい。

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